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 中国の花き生産
 
(株)フラワーオークションジャパン 白川 裕
 花き生産国として、徐々に存在感を増してきている中国。カーネーション生産はすでに世界第1位となるなど、生産規模の拡大には目を見張るものがあります。経済成長が目まぐるしい大都市と地方の経済格差を是正するために、地方には園芸分野への国の投資も積極的に行われており、今後も花き産業が中国における新たな産業として、積極的に国も投資を行うのではないかと思われます。中国は隣国の日本の生産者にとっても、将来的には脅威となる産地となることは間違いないと思っていいでしょう。
 しかし、生産量こそ世界最大級とはなりましたが、品質管理という点では問題も山積みであることには間違いなく、高品質な切花が日本に大量に輸入される時代は、まだ先のようにも思えました。先日、昆明を訪問したときに、採花〜前処理〜パッキング〜国内輸送〜飛行場という輸出の一連の流れを見てきましたが、すべてのプロセスに何かしら問題があり、改善すべき点があまりにも多いことに驚かされました。それぞれの過程において立派な施設はあるのですが、間違えた利用をしていたり、使い方が理解できていない事例が多く、すべての事項がラインに繋がっていないということが大きな問題であるように見えました。いろいろと現地の関係者にアドバイスしても、そこまでしないとダメなのか?と異口同音に唱える状況で、輸出に対する品質管理の知識の欠如があからさまに伝わってきたことをよく覚えています。
 また、中国は国内にもマーケットがあるという点が他の大規模生産国とも異なる点です。手間のかかる輸出をするなら、少し安くても現金即日決済が可能な国内に販売したほうが楽であるという現実もあり、アフリカなどのように国内にマーケットがないに等しい産地とは状況が異なるという点も、中国から輸入された切花の品質がなかなか改善されないということの原因の一つになっているように思えます。今後、山積された課題をクリアしていくことはとても大変で時間もかかるとは思いますが、これらの課題が解決されれば、日本にドッと津波のように切花が押し寄せてくるかもしれません。それまでに、国内の生産者は品質や品種などで大きな長所を国内マーケットにアピールし、今後さらに進むであろう輸入切花の増加傾向に対抗していける戦略を早急に組み立てていく必要があるのではないでしょうか。

▲上海の花市場。最近は展示の仕方もきれいになり、品種や色のバリエーションも豊富になってきている。
 
白川 裕
(株)FAJ営業本部所属。
2001年から(財)日本花普及センターに出向。オランダ駐在を経て2003年に(株)FAJに復職。農林水産省の日本花き輸出マーケティング調査委員、花き産業国際競争力強化対策調査委員を歴任し、日本の花き産業のグローバル化の可能性を模索中。


 植物とアート 箱の芸術家、ジョセフ・コーネル
 
(株)大田花き 銅金 裕司
 今回は、とても参考になりそうな箱の作家と、彼を解説した小説を紹介しましょう。それは、詩人チャールズ・シミックによる、“箱の芸術家”ジョゼフ・コーネル論で、「コーネルの箱」という本。コーネルの作品を写真で紹介しているのがなんともうれしいです。コーネルは絵も描けず、彫刻もできなかった20世紀の芸術家ですが、もしかしたら、よく引用されるのでご覧になったことがあるかもしれません。箱の中に人形や写真、コンパス、球、地図といったオブジェを配置し、一つの世界を構成します。それはいわゆるコラージュの技法です。あるいは箱庭作りです。私はそれがガーデニングにかなりよく似た技法、表現だと思います。その世界は何を見い出して、何を組み合わせるかという、着想と偶然が生み出す詩的世界、心象風景、そして創造の世界でしょう。そこには、日本画や油絵、彫刻などを専攻するのに必須の技術、文脈から遠く離れた世界があるように思います。そう、アイデアが完璧で、表現する構想がしっかりすれば、だれでもアーティストになれる、ということだと思います。ルネ・マルグリットの言葉を借りれば、「象徴的な意味を探す人は、像(イメージ)に内在する詩と神秘を捉えそこなう」ということもあるかもしれませんが。「コーネルの箱」は現代に置き換えれば“ヴァーチャル”ということにもなるかもしれません。リアルの中から自分にとって魅力のあるものだけを探し出し、組み合わせ、閉じ込めるのです。だけど、問われるべきはその手法ではなく、切り取られた世界がどうであるか、それをどう捉え、感じるかなんです。花の世界と似ていますね。コーネルの世界は自閉的ですが、詩的で美しいものです。コーネルは老いた母親と病弱な弟の世話をしなければならなかったことから、生まれ故郷のニューヨーク州からほとんど外へ出ることはなかったのですが、その好奇心は絵画や文学、音楽、演劇、バレエ、映画などあらゆる分野の芸術から、鳥や蝶、星座、惑星の運行にまでおよび、その背景に横たわる神秘を捉えようとしたのです。
 どうでしょう? すごく参考になる作家だと思いませんか?


▲「無題(赤ちゃん:小部屋に並んだ祈る子供[ムーランの画家])」
1950年代末滋賀県立近代美術館蔵

銅金 裕司
(株)大田花き社長室所属。メディアアーティスト。東京藝術大学非常勤講師。東京都写真美術館などでメディアアート作品の展示多数。秋にはアメリカからの作家達と、箱庭と園芸にかかわるコラボレーション、ワークショックを予定。東京工業大学においても「ITと植物」という夢のあるテーマで研究会を開始。


■キバナビワモドキ Dillenia Suffruticosa
 東南アジアに分布する高さ7mになる常緑低木。ビワモドキ科は、アジア、マダガスカル、オーストラリアに約60種があり、日本で園芸的に利用されているものは、唯一、オーストラリアの乾燥地でクッション植生するヒベルチアだけである。材は堅く、現地ではシンポーと呼ばれ、高級家具などに利用されている。果実はカレーの材料に使用されるものもある。本種は5弁黄色の花が美しく、葉脈も顕著で品があり、園芸的に栽培すれば人気が出ると思われる。

田中 耕次

キバナビワモドキ(サラワク島ムルにて)。



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